業務改善OPERATIONS
「本業以外の時間」を数字にする方法:分単位の見積もりと月換算
事務作業や報告など本業以外にかかる時間を、感覚値の見積もりと「分×回数×日数×人数」の掛け算で月換算し、人件費・機会・人数に置き換えて経営会議で使える数字にする方法を、経営者・管理者向けに整理します。
「事務作業に時間を取られている気がする」「本業以外の仕事が多い」という感覚は、多くの経営者と現場が共有しています。ただ、感覚のままでは投資判断ができず、改善の優先順位も決まりません。この記事では、本業以外にかかっている時間を分単位で見積もり、月単位・年単位の数字に換算して、経営の言葉に置き換える方法を整理します。必要なのは厳密な計測ではなく、掛け算の考え方です。
なぜ感覚値でよいのか
「正確に測ってからでないと数字を出せない」と考えると、可視化はそこで止まります。ストップウォッチで測る、操作ログを取る、といった方法は手間がかかるうえ、測られている側の行動が変わり、かえって実態から離れることもあります。
意思決定に必要な精度は、「その業務が月に5時間なのか50時間なのか」が分かる程度です。桁が分かれば、どこから手を付けるかは決まります。本人に「だいたい何分くらいか」を聞き、5分刻みで答えてもらえば十分です。
見積もりが甘くなりやすいのは、1回が短く回数が多い業務です。「メールの返信は1通3分」と言う人でも、1日に20通返していれば60分です。こうした業務を漏らさないために、先に業務の一覧を作っておくと見積もりが安定します。一覧の作り方は業務の棚卸しのやり方にまとめています。
掛け算の型:分 × 回数 × 日数 × 人数
可視化の計算は、次の1本の式に集約できます。
月あたりの時間 = 1回の分数 × 1日の回数 × 月の稼働日数 × 該当する人数 ÷ 60
例えば、仮に「日報の作成に1人15分、毎日1回、月20日稼働、担当者5人」とすると、15 × 1 × 20 × 5 ÷ 60 = 25時間が月あたりの時間です。年間では約300時間になります。1人あたり月160時間稼働と置けば、1人の約2か月分に相当する規模です。1日15分という小さな数字が、年間で見るとこの大きさになります。
同じ式を、書き出した業務ごとに当てはめて表にします。
| 業務(仮の例) | 前提 | 月あたりの時間 |
|---|---|---|
| 日報の作成 | 15分 × 1回/日 × 20日 × 5人 | 25時間 |
| 会議の議事録 | 30分 × 2回/週 × 4週 × 1人 | 4時間 |
| 問い合わせへの定型返信 | 5分 × 10回/日 × 20日 × 2人 | 約33時間 |
こうして並べると、「議事録が大変だ」という声が大きい業務より、誰も問題視していなかった定型返信のほうが時間を使っている、という逆転が起きることがあります。声の大きさと時間の大きさは一致しません。
「時間」を経営の言葉にどう置き換えるか
月25時間という数字は、そのままでは経営会議の判断材料になりません。置き換え方は3つあります。
- 人件費に換算する:時間 × 時間あたりの人件費(給与だけでなく法定福利費などを含めた概算)
- 機会に換算する:営業なら「その時間で何件の訪問・商談ができるか」
- 人数に換算する:年間の合計時間を1人あたりの年間稼働時間で割り、「何人分か」を出す
どれを使うかは、話す相手で変えます。経理や管理部門には人件費換算が伝わりやすく、営業責任者には商談数への換算が伝わります。経営者自身は「何人分か」で見ると、採用や配置の判断と直結します。
人件費換算は「その時間が減れば同じ額のコストが減る」という意味ではありません。社員は辞めませんし、給与も変わりません。減った時間を別の仕事に振り向けたときに初めて価値になる、という前提で数字を扱ってください。
この点を無視して「月25時間削減=〇万円のコスト減」と言い切ると、現場は「自分の仕事が減らされる」と受け取ります。数字は削減の証拠ではなく、振り向け先を決めるための材料として使うのが健全です。戻った時間を売上・採用・教育・社員への還元のどこに向けるかは削減した時間をどこに使うかで整理しています。
見積もった数字をどう扱うか
見積もりは一度出したら終わりではありません。改善や生成AIの導入を進めたあと、同じ式で「今は何分か」を聞き直せば、それがそのまま効果の測定になります。導入前後の比較の取り方は業務改善の効果をどう測るかで扱っています。
投資判断として、ツール費や外部支援費と削減時間を比べたい場合は、粗利や回収期間という見方も必要になります。営業組織を例にした費用対効果の考え方は営業AI導入の費用対効果をどう考えるかを参照してください。
数字の役割は、正確さを競うことではなく、社内で同じ土俵に立って議論できるようにすることです。
営業の現場から見ると、この数字が出るだけで会話が変わります。「日報が面倒だ」という不満は聞き流されがちですが、「日報に部門で月25時間使っている」と言えば、減らすかどうかの議論が経営の議題に載ります。
見積もりの数字は、必ず「前提」とセットで残してください。「15分 × 20日 × 5人」という前提が残っていれば、あとから前提だけを直せます。結果の数字だけが一人歩きすると、誰も検証できなくなります。
まとめ
- 意思決定に必要なのは桁が分かる精度で、感覚値で十分
- 月あたりの時間は「分 × 回数 × 日数 × 人数 ÷ 60」で出す
- 1回が短く回数が多い業務ほど、月換算で上位に来る
- 人件費・機会・人数のどれに換算するかは、話す相手で変える
- 数字は削減の証拠ではなく、振り向け先を決める材料として使う
今日できる一歩は、自分の業務を1つ選び、上の式に当てはめて月あたりの時間を出してみることです。
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